メンズ専門の美容室を開業する|顔剃りができない理由・美容所か理容所かの判断表・損益分岐と必要顧客数の試算

美容師は2015年7月の厚生労働省の通知で性別を問わずカットできるため、メンズ専門の美容室は美容所として開業できますが、顔剃りは理容の業務で、美容師に認められているのは化粧に付随する軽い程度の顔剃りまでです。「シェービング」を強調するサービスは軽い程度を超えて理容に当たるおそれがあると国が回答しているため(2018年7月のグレーゾーン解消制度の回答)、顔剃りを看板にするなら理容師と理容所の手続きが必要で、美容所で開く場合の採算は、セット面3席・固定費128万円の試算で単価5,500円なら1日約10.5人が損益分岐です。

理容室との違い、美容師ができないことの線引き、美容所・理容所・両方のどれで開くかの判断表、損益分岐と必要な顧客数の試算、顔剃りを頼まれたときの説明とメニュー表の文例、予約導線と商圏、つまずきやすい6つの点を整理します(2026年10月時点の情報です)。

目次

結論:メンズ専門の美容室を開業するときの早見表

メンズ専門の美容室は、美容所の手続きで開業でき、カット・パーマ・カラーは提供できるが、顔剃りは提供できない業態です。届出の形と採算の目安を一覧にします。

項目 目安・ルール 根拠・理由
開設する施設 美容所(開設届を出し、検査確認を受ける) 美容師法第11条・第12条
男性へのカット 美容師が性別を問わず行える 平成27年7月17日 健発0717第2号 厚生労働省健康局長通知
顔剃り 理容の業務。美容師は化粧に付随する軽い程度の顔剃りまで 理容師法第1条の2、昭和23年12月8日の厚生省通知「理容師法の運用に関する件」
「シェービング」を強調するメニュー 軽い程度を超える顔剃りの提供につながり、理容に当たるおそれ 2018年7月4日公表のグレーゾーン解消制度の回答
顔剃りを看板にする 理容師が、届け出た理容所で行う 理容師法第6条・第6条の2・第11条
損益分岐(3席・固定費128万円) 単価5,500円で月約262人(1日約10.5人)、単価3,000円なら月約480人 変動費率11%・月25日営業の試算
必要な顧客数 月の客数×来店周期。周期が5週から8週に延びると約1.6倍 来店周期は前提を置いた目安
価格の表示 税込の総額で表示する 消費税法第63条

メンズ専門の美容室とは — 理容室との違いは根拠法と免許

メンズ専門の美容室とは、美容師が美容所で男性客に特化したカット・パーマ・カラーなどを提供する店のことです。見た目が似ていても、理容室は理容師法に基づく理容所で、できる施術と必要な免許が違います。

比べる点 理容室(理容所) メンズ専門の美容室(美容所)
根拠法と定義 理容師法。頭髪の刈込、顔そり等の方法により容姿を整えること 美容師法。パーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすること
施術する人 理容師 美容師
顔剃り できる 化粧に付随する軽い程度のものを除きできない
カット できる 性別を問わずできる(2015年の通知以降)
パーマ・カラー できる(パーマは性別を問わず可) できる

2015年の通知の前は、美容師が男性にカットだけを行うことは制限されていましたが、現在はこの区別がなくなり、カットだけのメンズ客を美容所で受けることに問題はありません。一般の美容室が男性客を増やす方法は美容室でメンズ客を増やす方法で扱っており、この記事は専門店として開業する場合に絞ります。

美容師ができないこと — 顔剃りとシェービングの線引き

美容師は、独立したメニューとしての顔剃りやシェービングを提供できません。昭和23年12月8日の厚生省通知は「化粧に附随した軽い程度の顔そり」を化粧の一部として美容師が行ってもよいとしていますが、顔剃りを独立した施術として行うことはできないと整理されています。

  1. 「シェービング」を打ち出さない:2018年7月4日に公表されたグレーゾーン解消制度の回答で、厚生労働省は、美容所で化粧とうぶ毛剃りを行う事業について「シェービング」を強調すると軽い程度を超える顔剃りが提供される可能性があり、超えた場合は理容に当たるとしました。
  2. かみそりを使う内容は事前に確認する:ひげや襟足をかみそりで剃って整える行為は顔剃りに当たり得ます。かみそりを使うメニューを考えるなら、内容を書き出して保健所に確認します。
  3. 脱毛はメニューにしない:毛根に強い光を当てて毛乳頭などを破壊する行為は、機器が医療用かどうかを問わず医師法上の医行為とされています(平成13年11月8日 医政医発第105号)。
  4. 顔剃りがない前提で選ばれる理由を作る:カットとスタイリング、パーマ、カラー、頭皮のケアなど、美容所で提供できる内容で理容室との違いを出します。

顔剃りの線引きと国の判断の経緯、メニュー表記の注意は美容室で顔剃り(シェービング)はできるかで詳しく整理しています。

美容所・理容所・両方のどれで開くか — 免許と顔剃りの扱いで決める判断表

美容師だけで開き顔剃りを出さないなら美容所、顔剃りを看板にするなら理容師が理容所で行う形が基本です。価格帯は、損益分岐が美容師1人1日5人以下に収まるかで決めます。

自店の条件 開く形・決めること しきい値・根拠
スタッフが美容師だけで、顔剃りは出さない 美容所として開き、メニューから顔剃り・シェービングの表記を外す 美容師は軽い程度の顔剃りまで
美容師だけだが、顔剃りを看板メニューにしたい 美容所のままでは出せない。理容師を採用するか、顔剃りをあきらめる 顔剃りは理容(理容師法第1条の2・第6条)
オーナーが理容師 理容所として開き、カット・顔剃り・パーマ・カラーを提供する 理容師は性別を問わずパーマも可(2015年の通知)
理容師と美容師の両方を雇う 理容所と美容所の両方を届け出て、場所と担当を分ける 重複の扱い・区画は自治体で異なる。図面の段階で保健所に相談
商圏の価格帯に合わせると単価4,000円未満になる 家賃・人員を小さくするか、単価を上げられる立地を探す 3席・固定費128万円では単価4,000円で美容師1人1日4.8人、3,000円で6.4人
単価5,500円以上を取れる(パーマ・カラーの比率が高い) 3席・美容師3人で進める 損益分岐は1人1日約3.5人

両方の免許を持つ場合の届出の考え方は理容室と美容室の違いで確認してください。理容師が理容所以外で業務をすることは禁止されているため(理容師法第6条の2)、理容師を採用しても、理容所の届出をした場所でなければ顔剃りは行えません。

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損益分岐と必要な顧客数 — 3席・単価5,500円なら1日約10.5人

メンズ専門店の損益分岐は、月の固定費÷(1−変動費率)÷単価で客数にし、来店周期を掛けて必要な顧客数に直します。短髪の多い店ほど周期が短く、少ない顧客数で売上が立ちます。

項目 計算式 金額・人数
固定費 家賃15万円+人件費(3人×25万円×1.15)約86万円+その他15万円+借入返済12万円 128万円
変動費率 材料8%+決済手数料3% 11%
損益分岐の客数(単価5,500円) 128万円÷0.89÷5,500円 月約262人(1日約10.5人、1人約3.5人)
同(単価4,000円) 128万円÷0.89÷4,000円 月約360人(1日約14.4人、1人約4.8人)
同(単価3,000円) 128万円÷0.89÷3,000円 月約480人(1日約19.2人、1人約6.4人)
利益30万円を残す客数(単価5,500円) (128万円+30万円)÷0.89÷5,500円 月約323人
必要な顧客数(月323人) 周期5週(約1.15か月)/8週(約1.84か月) 約371人/約594人

試算の前提(仮定):12坪・セット面3席、オーナーを含む美容師3人(給与各25万円)、月25日営業、単価は税抜。借入返済は内装・設備900万円を7年で返す概算で、元金も手元資金の判断のため固定費に含めた。来店周期は統計ではなく前提です。

周期を5週に保てるかどうかで、集めるべき顧客数は約1.6倍変わります。固定費と変動費の分け方は美容室の損益分岐点の出し方で、メニュー別の周期と自店の周期の出し方は来店周期の平均はどれくらいかで確認できます。

メニュー表と顔剃りを頼まれたときの説明 — そのまま使える文例

男性客は所要時間と総額が予約前に分かり、時間どおりに終わることを重視します。メニュー表には所要時間と税込の総額を書き、顔剃りを扱わないことは予約の段階で伝えます。

メニュー表の記載例(所要時間・税込総額、金額は例)

  • カット(シャンプー・ブロー込み)50分 6,050円(税込)
  • カット+パーマ 100分 12,100円(税込)。長さと薬剤量により+1,100円の場合があります
  • カット+白髪ぼかし 80分 9,900円(税込)
  • ヘッドスパ(追加)20分 2,200円(税込)。医療的な効果をうたう表現は使わない
  • 表記の言い換え:「シェービング付きカット」→「カット(襟足・もみあげはハサミとバリカンで仕上げ)」
  • 予約ページの注記:当店は美容所のため、かみそりを使う顔剃り・シェービングは行っておりません

顔剃りを頼まれたときの説明(受付・施術中)

  • 予約時:当店は美容室のため、かみそりを使った顔剃りは行っていません。襟足やもみあげはハサミとバリカンできれいに整えます。顔剃りをご希望の場合は、理容室のご利用をおすすめしています。
  • 施術中:申し訳ありません。美容師は法律上、顔剃りを単独の施術として行えないため、当店ではかみそりを使っていません。えりのラインはバリカンで仕上げますので、気になるところを教えてください。

料金表は予約サイト、ホームページ、店頭のすべてで税込の総額にそろえます(消費税法第63条)。予約のしやすさでは、平日の出勤前と仕事帰りの枠、当日のWeb予約、会計時の4〜6週後の次回予約を用意し、隣の視線が気にならない席の間隔をとります。

商圏の選び方 — 競合は理容室・低価格カット・メンズ美容室

メンズ専門店の商圏は、男性の人口と年齢構成、平日に人が集まる場所、競合する理容室・低価格カット・メンズ美容室の数と価格で見ます。価格と時間の条件が合わないと、男性客は低価格店や理容室に流れます。

立地の型 中心になる客層 向く営業の形
オフィス街・駅前 20〜50代の会社員 平日の朝・昼・夜の短時間枠、Web予約
大学・専門学校の近く 10代後半〜20代の学生 パーマ・カラーの提案、SNSでのスタイル発信、学生料金
住宅地 30〜60代の男性、父子 土日の予約、子どものカットとの組み合わせ
郊外のロードサイド 車で来る幅広い年代 駐車場、待たずに済む予約制

男性人口と年齢構成は国勢調査の小地域の統計で確認でき、調べ方は出店エリアの人口と需要の調べ方で解説しています。競合の理容室が顔剃りを含む価格で営業している地域では、顔剃りがないことを、時間の短さやパーマ・カラーの提案で補えるかで価格の位置を決めます。

メンズ専門店でつまずく6つの点 — 起きる場面と防ぎ方

開業前後で起きやすいのは、メニュー表記、スタッフの対応、価格の表示、来店周期、営業時間、届出の範囲です。

  1. 予約サイトに「シェービング」の語が残る:テンプレートやカテゴリの選び方で、出していないメニュー名が表示されることがあります。防ぎ方:公開前に予約サイト・ホームページ・地図アプリのメニュー名を「シェービング」「顔そり」で検索して確認します。
  2. 常連客に頼まれて軽く剃ってしまう:化粧に付随しない顔剃りは理容に当たります。防ぎ方:かみそりを施術台に出さない運用にし、上の説明文をスタッフ全員で使います。
  3. 税抜価格だけを表示する:消費者に示す価格は税込の総額表示が必要です。防ぎ方:開業前に全媒体の料金を「6,050円(税込)」の形にそろえます。
  4. 次回予約を取らず周期が延びる:5週が8週になると必要な顧客数は約1.6倍です。防ぎ方:会計時に4〜6週後の予約を提案し、次回予約率を毎月記録します。
  5. 仕事帰りの枠を延ばして22時を超える:雇用するスタッフの22時〜翌5時の労働は25%以上の割増賃金です。防ぎ方:最終受付を所要時間から逆算し、終業を22時前に置きます。
  6. 理容師を採用したが理容所の届出をしていない:理容師は理容所以外で業務ができません。防ぎ方:顔剃りを始める前に、理容所の開設届と区画の扱いを保健所に相談します。

メンズ専門の美容室を開く前に、次の8項目を確認してください。

  • スタッフの免許構成と顔剃りの扱いから、美容所・理容所・両方のどれで開くかを決めた
  • メニュー表と予約サイトに、顔剃り・シェービングに当たる内容が入っていない
  • かみそりを使う内容を考えているなら、書き出して保健所に確認した
  • 固定費・変動費率・単価から、損益分岐の客数と美容師1人1日の人数を出した
  • 来店周期の目標を決め、必要な顧客数を計算した
  • 所要時間と税込の総額を、全媒体で同じ表示にした
  • 競合する理容室・低価格カット・メンズ美容室の価格と所要時間を一覧にした
  • 顔剃りを頼まれたときの説明をスタッフで統一した

よくある質問

美容師免許だけでメンズ専門の店を開けますか?

開けます。2015年7月の厚生労働省の通知で、美容師は性別を問わずカットを行えるとされたため、美容所としてメンズ専門店を開業できます。ただし顔剃りは理容の業務のため、メニューには入れられません。

メンズ専門の美容室でシェービングのメニューを出せますか?

出せません。美容師に認められているのは化粧に付随する軽い程度の顔剃りまでで、2018年のグレーゾーン解消制度の回答では、シェービングを強調すると軽い程度を超える顔剃りにつながり、超えれば理容に当たるとされました。シェービングを提供したい場合は、理容師が理容所で行う形にします。

メンズ専門店は1日何人来れば採算が合いますか?

固定費÷(1−変動費率)÷単価で月の損益分岐の客数が出ます。この記事の試算では、3席・固定費128万円・変動費率11%で、単価5,500円なら月約262人、1日約10.5人です。単価を3,000円に下げると月約480人が必要になります。

理容師と美容師を両方雇えば、1つの店で顔剃りもカラーもできますか?

理容所の届出をした場所で理容師が顔剃りを行えば可能です。同じ店舗で理容所と美容所の両方を届け出る場合の区画や設備の扱いは自治体で異なるため、開業前に保健所に図面を見せて確認します。

メンズ専門店の価格は一般の美容室より安くすべきですか?

安くする必要はありません。所要時間と目標の時間単価から下限を出し、損益分岐が美容師1人1日5人以下に収まるかを確かめてから、商圏の競合の価格と比べて位置を決めます。安さで集めた客層は、より安い店ができると移りやすくなります。

出典:東京都保健医療局「理容師、美容師の施術内容に関すること」(平成27年7月17日 健発0717第2号の内容)、美容師法第2条・第11条・第12条(e-Gov法令検索)、理容師法第1条の2・第6条・第6条の2・第11条(e-Gov法令検索)、経済産業省「グレーゾーン解消制度に係る事業者からの照会に対し回答がありました〜美容師による顔そりサービスの取り扱いについて〜」(2018年7月4日。岩手県掲載の資料)、国民生活センター「なくならない脱毛施術による危害」(2017年5月11日、脱毛の医行為の整理を掲載)、国税庁「No.6902 「総額表示」の義務付け」。売上・費用・来店周期は前提を置いた試算です。

メンズ専門店を計画するなら、まずスタッフの免許構成から開く形を決め、出店候補地の半径1〜2kmにある理容室・低価格カット・メンズ美容室の価格と所要時間を一覧にして、損益分岐が美容師1人1日5人以下に収まる単価かを確かめることから始めてください。調べる項目と表のまとめ方は美容室の競合調査のやり方で確認できます。

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この記事を書いた人

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